新学期がはじまって数週間が経ったある日。ピカチュウは担任のピカノに呼び出された。

ピカノ「よおピカチュウ。頼みがある。」

ピカチュウ「なんだよ。」

ピカノ「編入生達のことなんだがよ。まだ来てない奴が一人いてな。クラス委員のお前に探して迎えに行って欲しいんだが。」

ピカチュウ「だからなんでそういうのわざわざ僕に・・・。ん?クラス委員?」

ピカノ「ああそうだ。」

ピカチュウ「待て!そんなの引き受けた覚えがないぞ!」

ピカノ「ん?俺がお前の名前書いて出しておいたって言ってなかったっけ?悪い悪い。」

ピカチュウ「しまった!今年は委員会とか決めてないから何でだろうって思ってたのに!くっそ〜!」

ピカノ「そういうことだからお前には行く義務がある。編入生の名前はエルフーンだ。よろしくな。」

ピカチュウ「ぐぬぬ・・・!」


納得いかないままピカチュウはとりあえず外にでてきた。

ピカチュウ「あ〜あ。ハメられた。探せって言われても広い島の中を一体どうやって・・・。」

ぼやきながら気の向くまま歩くピカチュウ。

ピカチュウ「あ〜。森のほうに来ちゃった。こんなところにいるわけないな。戻ろう。」

ピカチュウが引き返そうと森に背を向けた瞬間、どこからともなくピカチュウをめがけてなにかが飛んできた。

ピカチュウ「うわっ!危ない!」

間一髪避けたピカチュウは飛んできたものを確認する。

ピカチュウ「なんだこれ?矢?誰がこんなものを?おい!誰だ!出て来い!!」

ピカチュウを声を聞いて、ガサガサと音を立てて森の中からポケモンがでてくる。

エルフーン「ナンダ、イノシシ、チガッタ。オラ、ザンネン。」

ピカチュウ「お前か攻撃してきたのは!僕はイノシシじゃない!なんだお前!?」

エルフーン「オラ、エルフーン。」

ピカチュウ「エルフーン・・・。お前か!編入生って!またご都合主義な偶然!」

エルフーン「オマエ、ダレ?オラ、オマエ、シラナイ。」

ピカチュウ「ああ、僕はピカチュウ。君がまだ学校に来ないから迎えに来たんだ。」

エルフーン「ソッカ。オラ、ガッコウ、バショ、ワカラナイ。」

ピカチュウ「そうかあ。じゃあ案内するよ。着いてきて。」

エルフーン「ワカッタ。オラ、ピカチュウ、ツイテイク。」

よくわからないが、ピカチュウはエルフーンをつれて学校方面へ向かった。


ピカチュウ「ええ、と。エルフーンはどこに住んでるの?」

エルフーン「サッキノモリ。」

ピカチュウ「森!?家とか住まないの!?」

エルフーン「イエ?」

ピカチュウ「・・・あれ?」

ここまでのやり取りでピカチュウは違和感を覚えた。

家に住んでいないエルフーンのことをおかしいと思ってしまったが、思えば自分達はポケモンである。

本当のところ、ポケモンは森とか草村とかに生息するのが一般的で、家に暮らすような知的なポケモンはこのポケモンアイランドのポケモンぐらいなのだ。

と、いうことはもしかしてエルフーンの方がポケモンらしいのであって、ポケモンらしくないのは自分達なのでは・・・?

とかなんとか色々葛藤していると、エルフーンが急に走り出した。

エルフーン「ウミダ!ピカチュウ!ウミダ!」

ピカチュウ「え?ああ、海だね。」

エルフーン「サカナ、オヨイデル!」

ピカチュウ「ああ。そうだね。」

エルフーン「オラ、サカナ、トッテクル!」

ピカチュウ「え!?おい!待てって!」

エルフーンは海に飛び込んでいった。

ピカチュウ「う〜ん。野生児だなあ・・・。」


エルフーンが海にもぐってしばらく時間が経った。

エルフーン「トッタドー!」

エルフーンはどこから取り出したのか魚の刺さった銛を高らかにあげて海からさっそうと出てきた。

エルフーン「ピカチュウ、サカナ、タベルカ?」

ピカチュウ「う、う〜ん。じゃあせっかくなんで・・・。」

戸惑いつつも断ることができなかった。

エルフーン「ヨシ。ヒ、オコス。」

ピカチュウ「火?ああ、もしかして木で火をおこしたりするわけ?」

エルフーン「チガウ。ライター。」

ピカチュウ「なんでそこは少し近代的!?」

エルフーンはどこからともなく取り出したライターで魚を焼き始めた。


ピカチュウ「なんだこの状況・・・。」

魚を2人でもそもそと食べているところに、キレイハナと知らないポケモンがもう一匹やってきた。

キレイハナ「・・・ピカチュウ君、こんなところでお食事ですの?」

ピカチュウ「あ、ああ、キレイハナさん。まあ色々あってお食事ですの・・・。あ、こっちは編入生のエルフーン。」

エルフーン「オラ、エルフーン。」

キレイハナ「キレイハナですわ。よろしく。」

ピカチュウ「そちらの方は?」

ピカチュウはキレイハナの隣のポケモンに目をやった。

キレイハナ「この子は白黒島から来た編入生のドレディアさんですわ。前から仲の良かったお嬢様なの。」

ドレディア「・・・。」

ドレディアは無言で会釈をした。

キレイハナ「でもこの子は無口でおとなしいの。少し島に慣れてもらおうと思って一緒に散歩していたのだけれど・・・。」

キレイハナの携帯が鳴り出した。

キレイハナ「あら、ごめんなさい。お父様からですわ。少し待ってらして。」

キレイハナは電話をしながら何処かへ行ってしまった。

エルフーン「ウ〜ン。サカナ、タリナイ。ピカチュウ、サカナ、トレルカ?」

ピカチュウ「え?いや〜。僕は泳げないからエルフーンみたいにはとても・・・。」

エルフーン「ナンダ。ピカチュウ、サカナ、トレナイ。オラ、サカナ、トレル。オラ、エライ。ピカチュウ、ダメナヤツ。」

さすがのピカチュウもこの言葉にカチンと来た。

ピカチュウ「言ってくれるじゃん。でもね、泳げなくても魚くらいとれるんだ。見てろ、たくさんとってきてやる。」

ピカチュウは海へ向かっていった。


残されたエルフーンとドレディア。

ドレディア「・・・。」

エルフーン「ナンダ?サカナ、ホシイノカ?」

ドレディア「・・・。」

無言でうなずくドレディア。

エルフーン「ショウガナイ。ワケテヤル。ホラ。」

ドレディア「・・・。」

ドレディアはもらった魚をちびちびと食べ始めた。

エルフーン「ン?アソコ、ミロ!トリダ!ドレディア!ツカマエルゾ!」

目のいいエルフーンは遠くにいる獲物を見つけたらしく、そちらへ走っていってしまった。

ドレディアも無言でそれに着いていくのだった。


一方その頃、海へ魚を取りに向かったピカチュウ。

ピカチュウ「よ〜し。見てろ!海に電気を流して・・・!」

ピカチュウの電気ショック!

電気ショックを食らった魚たちが浮いてきた!

ピカチュウ「やった!大漁だ!」

だがしかし、魚とともに大きな影も海からザブンと飛び出てきた。

ラプラス「ラプラスーーーーーー!!!」

ピカチュウ「うわあ!ラプラス!いたのか!?」

ラプラス「ラプラスーーー!!ラプラスーーー!!!」

ピカチュウ「ちょ、ごめんってば!怒るなって!いるの知らなかったんだ!悪かったよ!」

キレイハナ「ピカチュウ君!大変!」

ピカチュウ「あっ!キレイハナさん!どうしたの?」

キレイハナ「ドレディアさんがいなくなっちゃったの!」

ピカチュウ「えっ!?あっ!エルフーンもいない!やばい!ドレディアさんが襲われてるかも!」

キレイハナ「大変!探さないと!」


エルフーン「ウホッホ〜ッ!!」

エルフーンはどこからともなく取り出した槍を獲物に向かって投げつけた。

遠くから悲鳴が聞こえる。

エルフーン「トリニク、トッタドー!」

ファイアロー「だから鳥肉じゃないってば・・・。がくっ。」


エルフーン「ン?ドレディア、アブナイ!」

エルフーンは矢を放った。

そこにいたのはストライク君だった。

ストライク「うわっ!なになに!?」

エルフーン「ムシ、キケン!オラ、タイジスル!」

ストライク「うわああああああ!なんなの一体!?」

次々矢を放つエルフーンに危険を感じたストライクはとっさに木に登って逃げた。

ファイアロー「なんかわからないけど俺もいまのうちに逃げよう・・・。」

エルフーン「ムシ、ニゲタ。オラ、ツヨイ。」

ストライク「ふう。危なかった・・・。ん?ここ木の上?うわああああああ!!高いところ怖いいいいいいい!!」


エルフーンとドレディアは次に木の実を取り始めた。

ドレディア「・・・。」

ドレディアはエルフーンの弓矢を見つめていた。

エルフーン「ン?ヤ、メズラシイカ?」

うなずくドレディア。

エルフーン「ヤ、コウヤッテ、ウツ。ドレディア、ヤッテミロ。」

弓矢をエルフーンに渡され、見よう見まねで打ってみるドレディア。

「ぎゃあああああああ!!」

誰かに命中したようだ。

ヘラクロス「うわあああああ!!なんで矢が!いてええええええ!!」

プリン「あっ!ヘラクロス!また私のことつけまわしてたのね!プリンちゃんナックル!!」

ヘラクロス「ぶげらっ!!」

エルフーン「ウホッホ!ドレディア、ムシ、タイジシタ!ドレディア、スゴイ!」

ドレディア「・・・。」

ドレディアはどこか嬉しそうだった。


エルフーン「ソロソロ、ヨル。ヨル、アブナイ。ムシ、ケモノ、タクサンイル。ダカラ、コヤ、ツクル。」

ドレディア「・・・。」

二度うなずくドレディア。なんだかんだ楽しんでいるようだ。

エルフーン「キ、ヒツヨウ。キ、トッテクル。」

エルフーンは小屋を作るための木を探し始めた。


エルフーン「キ、ミツケタ!」

見つけた木らしきものの枝を折ろうとするエルフーン。

ウソッキー「いてててててて!!なんだ!?腕が折れる!!」

エルフーン「ウーン。コノキ、ヨクナイ。コノキ、サイテイ。」

ウソッキー「なんだよ!ケンカ売ってるのか!?」

エルフーン「キ、コンドコソ、アッタ。コレ、ツカウ。」

ドレディア「・・・。」

コクコクとうなずきながらエルフーンと一緒に木を運ぶドレディア。

その木は貧乏なドガース君のボロボロの木造住宅だった。

ドガース不在をいいことに、エルフーンたちによってドガースの家はバラバラに解体されてしまった。

エルフーンたちが去り、帰って来るドガース。

ドガース「うわ〜!!俺の家が!!なんで!!?」

ウソッキー「う〜ん。俺ってドガースの家の木以下なのかな・・・。」

ドガース「え?」


ピカチュウ達が探し回る中、この日はエルフーンがてきぱきと作った小屋で夜を明かした。

そして朝。

キレイハナ「夜が明けてしまいましたわ。思えば早く私の占いで居場所を探せばよかったですわね。」

ピカチュウ「え〜と、きっとここら辺に・・・。」

エルフーン「オ〜イ!ピカチュウ!」

ピカチュウ「エルフーン!ドレディアさん!探したよもう!」

キレイハナ「ドレディアさん大丈夫?さあ、帰りましょう。」

ドレディア「・・・。」

エルフーン「ドレディア、カエルノカ?オラ、サビシイ・・・。」

ピカチュウ「まあまあ。また学校で会えるからさ。」

エルフーン「ホントウカ?オラ、ガッコウ、イク!」

ドレディア「・・・。」

キレイハナ「どうしたのドレディアさん?」

ドレディアはどこからともなく槍を取り出し遠くへ投げた。

また悲鳴が聞こえる。誰かに命中したようだ。ピカチュウの学校のクラスメイト、ケンタロス君だった。

ケンタロス「ン、ンモー・・・。」

ピカチュウ「ああっ!ケンタロス!!」

ドレディアは槍の刺さったケンタロスをエルフーンに差し出した。

ドレディア「・・・あげる。」

エルフーン「ギュウニク、クレルノカ?オラ、ウレシイ!」

キレイハナ「ドレディアさん、一晩ですっかりたくましくなっちゃって・・・。」

ピカチュウ「いや、でもケンタロスはポケモンだからね。牛肉じゃないからね。ってか男女2匹が一晩同じところで寝るってどうなの・・・。」

エルフーン「オラ、♀ダ。」

ピカチュウ「ええっ!?」
続く


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