今日は快晴。演劇びより。いや、体育館でやるのだから天気は関係ない。

ピカチュウ「ええ!?『浦島太郎』が最初なの!?」

プログラムを初めて見たピカチュウは大声を張り上げた。

レオン「そうだよ、がんばってねピカチュウ君!」

ピカチュウ「ああ、どうしようどうしよう・・・。ピチュー達も見に来てるし・・・。」

レオン「ピカチュウ君、もしかして台本を・・・」

ピカチュウ「うん、ほとんど覚えてない・・・。(汗)」

レオン「でも浦島太郎のセリフくらい覚えてなくてもだいたい分かるでしょ?ストーリーに大したアレンジもないし、いけるよ!皆だって完璧にセリフ覚えてるわけじゃないだろうし、うまくつなげれば大丈夫!」

ピカチュウ「うーん、どうだろう・・・。」

レオン「とにかくもう逃げられないんだからがんばってよ!」

ピカチュウ「がんばりだけでどうにかなったら苦労しないんだけどね・・・。」

そんなことを言っていると、放送委員のブルーの司会で劇の始まりが告げられる。

ブルー「まずは、プログラムナンバー1、『浦島太郎』です。」

レオン「ほら、ピカチュウ君!」

ピカチュウ「う、うん!!」

ピカチュウはガチガチのまま舞台に立った。

ナレーション(2組ブルー)「むかしむかしあるところに、浦島太郎という漁師がいました。」

ちょんまげをつけ、竿を持ったピカチュウが現れる。とりあえずアドリブで浦島っぽいセリフを言ってみる。

浦島太郎(なみのりピカチュウ)「こらこら君たち、カメをいじめてはいけないよ。」

いじめっこA(オコリザル)「うっせー!!黙ってろ!!」

いじめっこB(2組ライチュウ)「この糞カメが生意気だからお仕置きしてやってんだよ!!」

いじめっこC(カイリキー)「漁師はすっこんでろやコラァ!!」

カメ(うめぼし)「ギャー!!助けてー!!」

もちろん、いじめっこ達はほとんど本気だった。

そんなことも知らずに裏方にいるミュウとピカノは実にのんきなものだった。

ミュウ「あの、みんな迫真の演技だけど台本とだいぶセリフが違うんですけど?」

ピカノ「まあいいじゃん。これくらいの違いなら客も別に気にしてないし。」

そんなことを言っているうちに浦島といじめっこ達は壮絶なカメ争奪戦を繰り広げていた。

うなる拳、ほとばしる電撃。

これをみかねたナレーションはなんとか話を進めようとする。

ナレーション「死闘の末、なんとか浦島太郎はカメを助けることが出来ました。」

このナレーションのセリフを聞き、仕方なくいじめっこ達は下がっていった。

カメ「うう、ありがとう、ありがとう・・・。」

浦島「ええっと、まあいいってことよ。アハハ・・・。」

もうこの時点で台本とはかなり違っているだろうことはピカチュウも感づいていた。

カメ「じゃあボクの背中に乗ってくらさい。良いところに連れてきますから。」

浦島「うん。」

ナレーション「浦島はカメにまたがりました。」

浦島「よいしょっと。」

うめぼし「うげげ・・・。」

ベチャッ。

浦島の体重に耐えられなかったカメはつぶれてしまった。

ミュウ「うわ、先生、まずいですよ!!うめぼし君が気絶してます!これ以上劇を続けられません!」

ピカノ「そうだな、まずいな・・・。おい!ナレーション!俺が今から言うことを言え!!」

ナレーションのブルーにこっそり耳打ちするピカノ。

ナレーション「(マジかよ・・・。)ええ、と・・・。カメはつぶれてしまい、浦島は海に沈んでしまいました。」

浦島「ええっ!?なんだよそれ!!」

ピカノ「いいから言うとおりにしろ!!後は俺たちがつなげるから!!」

あせりながらも、溺れたふりをするピカチュウ。

ミュウ「あの、あのまま竜宮城に行かせちゃった方が良かったんじゃ・・・。」

ピカノ「ははは!よし、ナレーション!次はこうしろ!ごにょごにょごにょ・・・。」

ピカノはナレーションに新たなつなげのストーリーを提供した。明らかに楽しんでいる。

ナレーション「ええ、と・・・そこに人魚姫が現れて、浦島を助けました。」

急に出番を作られた人魚姫がとっさに舞台に出る。

人魚姫(2組シャワーズ)「まあ、なんて素敵な王子・・・じゃなくて漁師サマなのかしら。」

ナレーション「浦島を助けた人魚姫はそう言うと海に戻っていきました。」

ミュウ「先生!話が変わってますよ!!行かせましょうよ竜宮城!」

ピカノ「うるさい!とにかくすすめるぞ!ナレーション次はこれを読め!!」

ナレーション「ええ、と・・・。浦島がたどりついたのは鬼ヶ島でした。」

浦島「なんでだよっ!!」

ナレーション「そこにとつじょ鬼が現れました。」

鬼(1組ブーバー)「ガハハ!現れたな浦島太郎!この宝はわたさん!!」

浦島「いや、宝より玉手箱を・・・。」

ナレーション「浦島は剣を抜いて鬼をやっつけました。」

浦島「剣!?竿しか持ってないのに!もうこれでいいや!鬼め!成敗してくれる!!」

竿で鬼をペシペシと叩くピカチュウ。

鬼「がははははは!!そんな攻撃は効かん!!」

浦島「十万ボルト!!」

ピシャーン!!

鬼「ぎゃああああああ!!やられたああああああ!!!」

ナレーション「見事浦島は鬼を退治しました。」

因みに鬼はリアルで重傷である。しかし次のセリフがあるので瀕死のまま劇を続けた。

鬼「も、申し訳ありませんでした。ではこの大きいつづらと小さいつづらと微妙な大きさのつづらからどれか一つお選び下さい。」

浦島「それも話が違うだろ!ってか微妙な大きさのつづら?そうか、それが玉手箱だな!じゃあ微妙なつづらをもらうよ!」

浦島につづらを渡すと鬼は担架で運ばれていった。

ナレーション「浦島は微妙な大きさのつづらを手に入れました。浦島はそのつづらを見晴らしの良いところで開けました。」

浦島「ここでおじいさんになって終わりだな・・・。竜宮城に行けなかったけど・・・。じゃあそれっ!」

ピカチュウが開けたつづらから飛び出てきたのは煙ではなく一つの丸い物体・・・。

ナレーション「浦島が勢いよくつづらを開けたので、入っていたおにぎりが転がっていって穴に落ちてしまいました。」

浦島「っておいっ!!!」

観客「ワハハハハハハハハハ!!」

ミュウ「先生!もうメチャクチャじゃないですか!!」

ピカノ「いいからいいから!!よしナレーション、次はこれを読め!!」

演劇大会はまだまだ続く・・・。
続く


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